in ベンチャー, 日記

僕がフリマアプリを創った理由

なんと4年ぶりのブログ更新。
FRILのリリースと同時に『フリマアプリ』が生まれて、早4年が経ちました。

今、世間で一番有名なフリマアプリは何?っと聞かれたら「メルカリ」と答える人が大半かと思いますが、「フリマアプリ」というジャンルも、UIも「FRIL」がはじめて生み出したものでした。(それだけに勝ちきれなかった悔しさは、もちろんあります。)

自分自身、フリマアプリというサービスがここまでスタートアップ業界、スマホ業界のスターダムを駆け上がっていくとは予想していませんでした。

最近、楽天グループ入りしたこともあってか「どうしてフリマアプリを創ろうと思ったんですか?」と質問して頂くこと増えてきたので、振り返りも含めてフリマアプリを創ろうと思った理由を書こうと思います。

起業のきっかけ

僕が起業しようと決心したのは2011年末。
元々、起業したいという思いからネット業界に飛び込み、当時はVOYAGE GROUPというベンチャーで子会社の代表をしていました。

僕のキャリアはガラケーという「前略プロフィール、モバスペ、魔法のiらんど、@peps!、ふみコミュ、Decolog、CROOZブログ、decoo」などのおよそ、インターネットおじさんなら絶対に使わないような、閉じた世界からスタートしました。(この経験が後の大きなアドバンテージになりました。)

当時はガラケーメディアさんに広告を掲載してもらうビジネスをしていたので、こういったガラケー発祥のメディアのPVがどんどんスマホに喰われていくところを肌で感じ、スマホの熱が痛いほど伝わってきました。

その傍ら、共同創業者の@yutadayo, @takejuneと土日に集まっては、webサービスを作る日々を過ごしていました。
純粋にヒットするwebサービスを作りたいという気持ちが強く、

  • mapu(ガラケーのチェックイン&twitterクライアント)
  • eventap(twitterアカウントで誰とでも気軽に予定を作成できる)

等を作った後、次に何を創るか煮詰まっていた3人はサンフランシスコに物見遊山に行くことに。これが後の起業につながることになりました。

サービスの着想

SFでの目的は大きくこのブログでも書いているので割愛しますが、現地のスタートアップの熱量とアプリのクオリティの高さに驚き、世界が急速にアプリにシフトしていくのを実感しました。(当時はこんな記事が書かれるほどスタートアップはブームになっていました)

また、「Airbnb」「TaskRabbit」「Zaarly」「GetAround」などのシェアリングエコノミーがテーマのスタートアップが注目を浴びているのも記憶に残りました。

スタンフォード大学に行った帰りにGoogleの創業ガレージで撮った写真。
帰国後、次のプロダクトで3人で起業することを決意。

起業する上での事業プランは、早い段階でスマホアプリでCtoCのサービスにすることに決めました。
他にはイベントのチケットサービスとか、NAVERまとめが流行っていたのでキュレーションサービスの案がありました。

大きな決め手だったのはSFでCraigslistをスマホで焼き直したり、何かの分野に特化することでdisruptするスタートアップが目立っていたことです。
SFで様々なCtoCを目にしたことで、世界の流れがそちらに向いているのではと感じていました。

議論のフォーカスは、何のCtoCをやるのか?ということで「スキル」「空き時間」「自動車」「空間」様々なアイデアが出ましたが、結局は「物」に落ち着きました。

元々のFRILの原案になったサービスは「Jumvle」というコードネームで(由来は「jumble sale」というフリマを意味する英語)「近くの人と物の譲り合い(売り買い)できるサービス」がコンセプトのサービスでした。

しかしこのプランはすぐにpivotすることに…。

人が欲しがるものを創る

このjumvleの案は煮詰めるほどに、課題を感じるようになりました。
まず、日本でCraigslistモデルで成功した事例がなかったこと。
CtoCの場合はマッチングが肝になりますが、どこで何を出品されるか分からないモノをエリアだけでマッチングさせるのは無理があるし、マネタイズも見えませんでした。

そして何より、「誰の何の課題を解決するサービスなのか」がはっきりしていませんでした。
過去に自分たちが作ったサービスは自己満足の「俺が考えた最強のサービス」であり、ほとんど利用されることはありませんでした。

同じような思いつきで作ったサービスに、自分たちの命運を賭けるのは危険だと感じていました。これはpivotした後の、ピッチ資料です。

結論から言うと「女の子が着なくなった洋服を簡単に売買できるフリマサービス」としてpivotしました。

このプランにpivotしたのはガラケーのブログで、女の子達が自撮りしたコーデなどを売ったり、mixiやtwitterを駆使して服を売っているのに気付いたからです。
この時は本当にガラケー時代の何気ない視点に立ち戻れたのが大きかった。

ガラケーインターネットにどっぷり浸かっていたこともあり、当時からヤフオクやモバオクは存在したのに、モノを売る機能などはないブログやmixiを無理矢理使ってなんとかやりくりしている層がいることを知っていました。そこには下記のような課題がありました。

  • ガラケーの投稿サービスがメール投稿が主流
  • ブログ投稿やオークションの出品もメールが主流でスマホに最適化されてない
  • ヤフオク、モバオクは利用に有料課金が必要で敷居が高い
  • 登録から取引完了までが長くて複雑、スマホの隙間時間に最適化されてない

つまり「インターネットはケータイでやるもの、PCを持ってないような女の子」が「簡単にモノを売れるスマホアプリ」は欲しがるはずだという明確な課題が見えました。

mixiで服を売ってた人も、その人自身はそれを課題だとは思っていませんでした。
なのでカメラで簡単に写真を撮って出品ができるアプリが欲しいとは言いませんでした。

ただ、実態としては服が売りたくて、mixiアルバムに写真を投稿して、アルバムを非公開にし、コミュニティでシェアして、あとはメッセージで閲覧キーを送って個別相談をしていただけでした。
女の子にはそれが一番手軽だったのです。
その流れをアプリにしてもっと手軽で便利にするサービスは筋が良いと思えたのです。

これがフリマアプリが誕生した瞬間でした。
その後、FRILはスマホアプリの波と今までインターネットでモノ売った経験のない若い無消費層に浸透することで、強烈に成長していくことになりました。

全てはタイミング

VOYAGE GROUPでも事業の立ち上げばかりやっていたけれど、もし「スタートアップの事業を成功させるのに一番重要なことは何か?」と質問されたら「タイミング」と答えると思います。

当時の時代背景(2011年〜12月の初旬)はどういう状態だったかというと、こんな感じだったと記憶しています。

  • フィーチャーフォンからスマホへの乗り換えが急激に進み、大体iPhone3GsかiPhone4を持つようになる
  • スマートフォン元年と呼ばれ、ほとんどのベンチャーがPC、ガラケーの世界からスマホシフトに舵を切っていたが、売上としてはまだまだこれから
  • 有料アプリがまだまだ多く、無料モデルでマネタイズが確立できていない
  • スマホの広告市場(主にリワード)が立ち上がり、ポイントアプリが普及し出す
  • ネイティブ開発ができるエンジニアが市場に少なく、フルネイティブのアプリではなく、ガワネイティブアプリが主流
  • LINEが若い層に普及しだしており、ベッキーを使ったCMで猛烈にグロースする
  • スタートアップ界隈ではDECOPIC、Snapeee、papelook、my365などのカメラアプリ、写真共有アプリが流行し、海外ではInstagramが500万DLするなど、カメラ系のアプリが台頭する
  • パズドラ、黒猫のウィズ、モンストもなく、まだまだガラケーソシャゲが儲かっており、カイブツクロニクルがネイティブゲームの火付け役になる

振り返ってみれば、まさにスマホのゴールドラッシュの始まりと同時に、サービスを仕込むことに成功していました。
このタイミングで、アプリのCtoCという文脈に事業を張ったことが最高の成功要因であり、FRILの成長は時代が押し上げてくれた点も多く、まさに上りのエスカレーターに乗っている感覚でした。

タイミング以外にアイディア、チーム、ビジネスモデルのどれもがうまくハマったというのもあったと思います。ただし、やはり一番重要だったのは間違いなくタイミングだったはずです。

まとめ

事業の成功は半分以上がタイミング、業界に重要な影響を及ぼしそうな何かが起こっていることを示す兆候を、見極めることが大切。

  • 新規市場または新しい利用環境の爆発的成長(スマホの普及等)
  • 経済的な世の中の時代背景(不況)、法改正等

その上で、人々の課題を解決するものを作ること。

  • 既に片付けようとしている用事をより便利に片づけられる製品・サービス
  • 新たに新規の用事を片づけられる製品・サービス

これらの組み合わせにより、イノベーションのジレンマでいう無消費者層を取り込むこと。

  • 経済的な理由で使えなかった
  • スキルがなく使えなかった
  • 専門家を雇って対応していた
  • 既存の製品・サービスを使って何とかやりくりしていた

もちろん、様々な理由でpivotすることはあるにせよ、プロダクトを作る前に、自分のサービスがこの法則に当てはまっているかを見極めてみるべきだと思っています。
このエントリーがこれからスタートアップを志す人や新規事業を考える人の一助になれば嬉しいです。

p.s

機運が高まれば死ぬほど泥臭かったフリマアプリのUI設計のユーザーインタビューやマーケットプレイスを離陸させるまでの鶏玉子問題をどう解決したかなどのエピソードも書こうと思います。